グライダーで宙返り

2013/03/31 7:55 AM

 
 最後にS教授の記の中で私が最も気に入っているところを抜粋して、この報告を終わろうと思います。
 先生はグライダーを操縦するのです。この手記の中に書かれた感じが、まさに先生の人生を表現していると思います。
 志とロマンに生きている先生なのです。 
 
「操縦桿を前に押して急降下し、増速する。翼に当たる風がヒュンヒュンと鳴る。充分に増速したところで、操縦桿をグッと引けば、機は頭を上げ、垂直に上昇する。そして、次は完全に背面になる。私の頭は大地のほうを向き、足の方は天空を向いている。この状態が背面飛行である。それより、大きな円弧を画いて降下し始める。強い重力がかかり、頬っぺたが一寸くらいに引っ張られるように感ずる。このあたりで、意識が薄れやすくなる。機は非常な高速で姿勢を回復しつつあり、操縦桿に強い風圧を感じ、翼の空気を引き裂く音が聞こえてくる。少し操縦桿を引き上昇の舵をとると、機は滑らかに平常の姿勢に戻る。これが宙返りである。母親の傘寿(80歳)の時、長男の助教授昇任の時、私は連続3回の宙返りを強行した。平成の御代、天皇即位の大礼の折のものを以て、この最後と決めた。連続3回の宙返りは、これで終わりと決めたので、初孫が誕生した時は、多少の間をおいて宙返りを3回行った。次の孫が生まれた時も、老鳥人はこれを行った。私はまだ飛べる。飛ぶという緊張感が、私の健康をささえているのである。あまり遠くない将来、少量のガソリンを積んだモーター・グライダー(グライダーに小馬力のエンジンの付いたもの)で風に乗ってかなりの距離を飛んでみたいと、このロマンに胸を膨らませている」
 
 訪問記は以上です。
 確かに裕福な家に生まれたとは思います。しかし自分は信じていないキリスト教のために、わざわざ敷地内に教会を建てるでしょうか?
 これで先生は上智の教授になりますが、まさに神が指名したのではないでしょうか?
 そしてGHQの没収すらも食い止めたのは神だと思いませんか?
 
 家をコンサート会場として解放するのもすごいです。その見返りは今のところ無いようですが、別に見返りが無くても気にするような先生ではありませんでした。


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コメント

  1. まんじゅう より:

    S教授のロマンに、胸が躍りました。緊張感が、健康を支えている・・体の隅々にまで号令がいっているような…細胞たちが、まだまだ必要とされている、みたいな。。(笑)志とロマンが、いつまでも子供心のままのS教授かな、と。町のみんなのために自宅を開放するS教授に、神が指名した家なんだ、と思いました。素敵なお話でした。(^^)

  2. 小町 より:

    グライダーで飛ぶ先生が気持ち良さそうです(笑)お祝いで飛ぶ時が多かったと思います。この先生に教えてもらいたいと思ってきます。教会を建ててしまうのも、クリスチャンがいたからだと思います。家が大きいからとコンサートもしていると思います。人がたくさん訪れる家は楽しさもたくさん来ると思います(笑)電波がなぜ飛ぶのかを考え続けることが出来るんだと思います。見返りを期待していないことがとってもいいなと思います。

  3. みっく より:

    ほんとにエネルギーいっぱいで素敵なS教授だと思います。グライダーに身を任せる宙返りはほんとにスリル満点に思います。それを喜ばしいことがあった時にされるのもとっても素敵だと思います。ご家族はちょっとドキドキかもしれませんが(笑)グライダーでの宙返りも、何か利益があるわけでないけど、うれしいことがあったら飛びたい!と思われるからされるんだと思います。教会もコンサートも何の見返りも期待せずにされてるからこそ、与えたS教授側も、与えられた地域の方々も、満足なんだと思いました。

  4. 和佳 より:

    宙返りってなんかすごい、そして先生の文章が空間ってなんかきれいな配置なんだなって感じるような…かっこいいです。なんだか周囲が回るのか自分がまわるのか…そして来るんとまわってひとつながりのコトのような…ほんとに志とロマンとを感じるきがします。何度考えても…敷地内に信じてないものをたてる…というのは凄いことだと思います。逆に…自分は…まったくもってそういうのの侵入をゆるしてないよね…と感じるようです。先生は…見返りを期待してないのだなと思います。ほんとに…幾つものお話がおもいだされ…そうなんだなって感じました。

  5. どせい より:

    先生が、グライダーで宙返りをするシーンは、その記述をとおして、こちらまで緊張しました。背面飛行のときは、こちらまで上下が逆になっているような気分で、元にもどるときは、強いGがかかって意識が薄れやすくなりながら戻っていく・・・のだと思います。

    先生は、お母さんの傘寿、ご長男の助教授昇任、そして天皇陛下の即位の時に、これを3回連続で繰り返されたのだと思います。

    ある意味、命をかけるような宙返りで、自分を何かにささげるような行為であると思います。ですが、先生にとっては、このような危険と裏腹の「飛ぶ」ということの緊張感が、自分の健康を支えているのだと思います。

    自分は信じていないキリスト教の教会に、わざわざ自分の家の敷地を提供して、コンサート会場には、ご自分の自宅の中まで提供されていると思います。その見返りはないし・・・別に見返りがなくても気にするような先生でなかったのだと思います。

  6. ばらんす より:

    グライダーで宙返りするとき、意識を失う可能性もあるのだと知り、危険を冒してもチャレンジされているんだと思いました。いつか、モーター・グライダーでかなりの距離の飛行をされたいと考えられていて、いつまでもチャレンジされたいというロマンをお持ちなのだと思いました。敷地内にキリスト教の教会を建てられたり、その縁で上智大学の教授になられました。GHQの没収が食い止められたのことに、そこにも以前、話にあった「分け隔てがない」姿をあるように思い、神は「分け隔てがない」ところに姿を現すのかと思いました。

  7. まりん より:

    S教授のグライダーの手記は、ものすごい興奮が喜びが伝わってくるような熱い文章です。おいくつになられても、現役バリバリを生き続けてS教授のエネルギーはものすごいです。それは自分のための野望ではなく、みんなのための志とロマンからあふれるエネルギーって感じがします。どのエピソードにも神との深いつながりを感じます。

  8. まるこ より:

    「私はまだ飛べる。飛ぶという緊張感」という言葉がとても印象的です。手記全体からS教授のほとばしる生命力を感じます。グライダーをされている方は沢山いらっしゃるのかもしれません。でも、S教授のようにご自分の外側に起こった出来事に合わせて空を飛ばれて、敢えて難しい技に挑まれるという方は少ないのではないかと想像しました。そこにS教授やご家族の世界観、人生観が表れているのではないかと感じました。大変貴重な訪問記を読ませていただきました。ありがとうございました。

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