ワンネスの映画の話が来たとき、まずは映画に関する本を読みまくりました。
映画業界には身を置いていなかったので、机上の論理だけでも知っておかなくてはと思ったのです。
ハリウッドの人が『低予算映画を大作に変える撮影術』という本を書いていました。
これはまさにピッタリの題名です(笑)。
写真はその本のヒトコマです。
ドリーというのはレールのことです。
二本のレールを敷き、その上にカメラを置いて、次第に接近しながら撮るのです。
主人公の智也とヒロインの容子が校庭のベンチで、映画の中では初めて会う、というシーンに使おうと思いました。
映画を見ている観客は、ふたりの関係がまだ分かっていません。
でも「好きだ」とか言うのではなく、別の形でそれを伝えたいと思っていたら、このページにぶつかったのです。
おそらく二台のカメラを次第に遠ざけていれば、疎遠になることが表現できるでしょう。
このようなレールを使いたい理由は、もうひとつありました。
このシーンで交わされる会話が、たわいもないものでからです。
普通に撮れば、「飽きること」を誘うシーンになってしまいます。
それこそ、低予算が低予算のまま終わってしまいます。
このシーンのために一週間前、俳優には何度もリハーサルをさせました。
お互いの目をそらす練習と、お互いの目と目を合わせる練習です。
こうして本番に臨みました。
(続く)
同じスピードでじわりじわりと寄って行くことで親密さを表現できるというのがすごく面白いと思いました。こうやって非言語的に情報を伝えるということを映画では敢えてやっているのだと思いました。考えてみれば私たちも日常生活で非言語的に沢山の情報を受け取っているのだと思います。言葉では好きだと言っていても非言語的情報が嫌いと伝えていれば、そちらが本当だと受け取ってしまうと思います。目をそらしたり目をあわしたりするタイミングやそこから表れているものも、非言語的な情報として全て観客に伝わってしまうので、とても大事な練習をされたのだと思いました。