映画「ワンネス」 私たちに見えているのは現在と過去

2013/07/15 8:33 AM

 
「ワンネス・キャラ入りオフライン初版」の前半をウエブカメラで公開して、数人に見てもらいました。
 その感想を読むと、監督が作ろうとしたものは、よく表現できていたようです。
 ひとつが、カメラをバックしながら撮ったことです。
 これは私たちが生きていく時と同じだと思うからです。
 私たちに見えているのは現在と過去だけです。
 一寸先は闇かも知れないし、光かも知れませんが、見えません。
 だとすれば、カメラはバックで撮るべきです。
 「ワンネス・キャラ入りオフライン初版」の前半見た人の感想は
 
「最初、逆再生しているのかしらと思ってなんだか不思議な感覚になりました」
 
「カメラが後退していくので何かフイルムが逆回転しているような…、でも人々の動きはスムーズで見たことがない映像だと思いました」
 
「パトカーの後ろの窓からの撮影は本当に斬新で、とても面白い映像だと思いました。普通だと景色は横から後ろに過ぎ去っていくのに、景色が後ろに引いていって、最初の瞬間、どこからの景色なのか、自分の立ち位置がわからないような感じがしてクラッとする感覚がありました」
 
「智也がゼロ次元に飛ばされて、アニマの足からのカメラアングルで、足から映すのかーという驚きがあってドキドキしました」
 
「カメラがバックしながら撮った映像からの場面の展開がすごくいいなと思いました。観客も、一緒に場を変えられたような・・不思議な感覚になりました。容子が研究室に入って行く時、容子の目線の先ではなく、ずっと容子の様子を映しているのが、すごく緊張感が伝わって来て、よかったなと思いました」
 
 このように、カメラを後退させながら撮るというのは、成功したようです。
 でも撮影は結構大変なんですよ。
 レールを敷けば安定して撮れますが、真後ろを撮るので、敷いたレールが映ってしまうので使えません。
 となるとカメラを手持ちにして下がりますが、カメラマンは後ろが見えないので補助する人が必要になります。
 しかも目指す主人公はずっと後ろにいます。
 三部屋後退してやっと主人公にたどり着きますが、他の映画では元々、主人公に狙いを定めて近づくと思います。
 でもそれは、私たちの生き方ではないはずです。


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コメント

  1. どせい より:

    ワンネス・キャラ入りオフライン初版」を見た、皆さんの感想が、とてもおもしろいです。まるで逆再生の映像を見ているようで、どこからの景色なのか、自分が見ている立ち位置すらわからなくなっている様子が伝わってきます。初版を見た人たちは、一様に、この様子に混乱をしているし、実際に撮影したカメラマンも、後ろしか見えないのに前に進むという大変な撮影作業であったと思います。

    ですが、これは私たちが生きていくときと、同じ状態を表しているのだと思います。私たちに見えているのは、現在と過去だけで、だから、自分の立ち居地すらよく分からないまま、先が見えない状態で前に進んで、いろいろぶつかったりしていると思います。そう考えると、普段、自分の目の前の景色は、前に向かって進む風景が見えているように錯覚をしてしまいますが、実は、私たちの目の前の風景でさえ、後ろしか見えいまま前に進んでいる状態なのだと思います。

  2. まるこ より:

    何も持たずに後ろ向きに歩くだけでも、普通は怖いと思います。それをカメラを手持ちにして撮影に集中しながらバックして行くとなると、想像しただけでも本当に大変な撮影だったのだろうと思います。でもこの手法によって、未来が見えない私たちの生の視点が描写され、これまでにないとても斬新な映像に仕上がっているのだと思いました。何かに狙いを定めて向かっていくというのは、よく言われる「ヴィジョンを持ちなさい」という視点と同じだと思いました。ワンネスの視点は違うのだと思います。カメラを手持ちにして後退されたカメラマンさんのように、いま、ここに委ねるという視点があるように感じました。

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